お役立ちコラム
2023/04/12
停電時の太陽光発電と蓄電池を活用した電力確保方法について解説
蓄電池
日本は台風や地震などの自然災害の発生が多く、長く停電が続いてしまうケースも少なくありません。
太陽光発電を設置している場合は、「自立運転機能」で停電時でも電気を使うことができますので、ぜひ活用したいところです。ただし、使える電力には制限もあるので、使い方には注意が必要です。
今回は、停電時に太陽光発電を活用するための方法について解説します。
停電時に使える電化製品の例や、蓄電池の必要性や使い方、蓄電池の設置方法や業者の選び方についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
太陽光発電は停電時でも「自立運転機能」で使用可能!
太陽光発電は、太陽のエネルギーで電気を生み出すソーラーパネルと、そのエネルギーを私たちが使える形に変換するパワーコンディショナーなどの周辺機器とで構成されています。
通常時、太陽光発電で発電した直流電力は、家庭で使用できるよう交流電力にパワーコンディショナーで変換されます。
自家発電分だけでは電力量が足りない場合に、不足分を電力会社の系統電源(商用電源)から供給して補うしくみです。自家発電分が余った場合には、余剰分を電力会社に売ることができ、これを連系運転といいます。
太陽光発電のソーラーパネルは、太陽光が当たっていれば発電し続けます。そのため、発電した電気を使える状態にすることで、停電時でも電気の使用は可能です。
この「電気を使える状態にする=自立運転状態にする」のが、太陽光発電のパワーコンディショナーなどに付いている「自立運転機能」です。自立運転機能は、パワーコンディショナーにも付いているのが一般的ですが、メーカーや機器によって使い方が異なるケースもあります。
まれに、自立運転機能が付いていない場合もありますので、停電時に備え、自立運転機能の使い方を確認しておくことをおすすめいたします。
実際に大規模な停電被害があった際に、太陽光発電の「自立運転機能」を利用して住民に電力の供給を行った事例もあります。 参考:経済産業省 太陽光発電の自立運転機能の周知について
「自立運転機能」を停電時に使う方法
通常時、パワーコンディショナーはコンセントから流れる電気を使って動いているので、停電するとパワーコンディショナーは動きません。これを使える状態にするのが自立運転機能です。
一般的な、自立運転機能を停電時に使う方法をご紹介します。
- パワーコンディショナーに付いている「自立運転用コンセント」の位置を確認する
a. 屋内用パワーコンディショナーの場合:機器の底面または側面
b. 屋外用パワーコンディショナーの場合:「非常用コンセント」などの記載があるコンセント - 取扱説明書に沿って「自立運転モード」に切り替える
- 主電源ブレーカーをオフにする
- 太陽光発電ブレーカーをオフにする
- 自立運転モードに切り替える
自立運転モードに切り替わったら、自立運転用コンセントに必要な機器を接続すると使用可能です。
一部の機器には、停電になると自動的に自立運転モードに切り替わるものもあります。自立運転用コンセントにカバーなどが付いていて、ネジを取り外してからでないと使えないという機器もあります。
いざというときに慌てないために、手順やコンセントの位置は確認をしておきましょう。自立運転モードでは、いつも使っている家庭用コンセントは使用できません。
パワーコンディショナーの自立運転用コンセントや、非常用コンセントを電化製品と接続して電気を使用します。そのため、太陽光発電設備をこれから設置する場合は、非常時に使いたい電化製品が使いやすい場所に、自立運転用(非常用)コンセントがあるかも考えて、設置場所を決めることをおすすめします。
非常用の備えとして、延長ケーブルを準備しておくのも一つの方法です。
パワーコンディショナーとは別に、自立運転用コンセントを設置できることもありますので、使用場所を選ぶ電化製品を使う可能性が高い場合は検討してもよいでしょう。
「自立運転機能」を停電復旧時に切り替える方法
自立運転機能は、停電が復旧したら必ず連系運転モードに切り替えをします。
停電復旧時の切り替え方法もご紹介します。
- 停電が復旧したら自立運転モードを解除する
- 主電源ブレーカーをオンにする
- 太陽光発電ブレーカーをオンにする
- 連系運転(通常)モードになっているかを確認する
自立運転モードのままになっていると売電ができないので、必ず連系運転モードに切り替えます。手順を間違えると機器故障につながる可能性もあるため、取扱説明書を確認しながら、一つずつ作業を行なってください。
自立運転モードから連系運転モードへの切り替えには、操作完了後から150~300秒ほどかかることもあります。操作をしたあとは、しばらく経ってから自立運転モードになっているかを確認しましょう。
「自立運転機能」はどんな家電をどこまで使える?
家庭用の場合、自立運転機能を使って使用できるのは一般的に1,500Wまでです。
企業などが工場の屋根などに設置している太陽光発電の場合、ソーラーパネルの枚数や各々の事情によって規模が異なるため、一概にどのくらい使えるとは申し上げられません。
ただし、企業用の場合であっても通常時よりは使える電力量は少なくなりますので、機器の使用には注意が必要です。
動かせる家電の例は以下のとおりです。上限が1,500Wのため、製品ごとの消費電力も記載していますが、メーカーや機種によって異なります。あくまでも目安として参考にしてください。
- 冷蔵庫:100~300W
- 電子レンジ:500~1,400W
- 炊飯器:100~300W
- 電気ポット:900~1,400W
- 扇風機:30~40W
- 洗濯機:200~400W
- 掃除機:850~1,000W
- ドライヤー:600~1,200W
- テレビ:300~500W
- ラジオ:0.1~10W
- ノート型パソコン:50~150W
- 携帯電話、スマートフォンの充電:5~15W
消費電力をあまり使わない家電の場合、1,500W以内であれば組み合わせて使用ができます。
冷蔵庫や洗濯機、ドライヤーは消費電力量を見ると使用できそうですが、使い始めに消費電力量が大きくなりがちな製品です。そのため、天気が悪いなど発電が十分にできていない状況下では1,500Wに満たず、途中で電源が切れてしまう恐れもあります。
消費電力量を比べて、テレビよりもラジオを使うなど家電の優先順位を決めておくことや、炊飯に消費電力がかかりそうならカセットコンロを準備しておくなどの対策が必要です。
「自立運転機能」では使ってはいけない家電もある
自立運転機能下では、使うときに気を付けたい家電があります。
以下が一例です。
<使ってはいけない家電:途中で電源が切れると困るもの>
- 医療用機器
- デスクトップ型パソコン
- ガスや灯油を使う暖房器具
電力が不足した場合は接続が切れてしまうため、電源が突然切れることで危険がともなう恐れがあるものや、情報が消えてしまうものなどは、使わないようにしましょう。
<使わないほうがよい家電:消費電力が大きいもの・突入電流が大きいもの>
- IHクッキングヒーター
- 電子レンジ
- 電気ストーブ
- 遠赤外線ヒーター
- 洗濯機
消費電力が大きい家電を使ってしまうと、あっという間に電力を使い切ってしまいます。非常時にあえて使う必要がないものとして、覚えておくとよいでしょう。
「自立運転機能」を停電時に使うときの注意点
停電時は大変に助かる自立運転機能ですが、使うときには注意点もあります。
前述したように、停電時にパワーコンディショナーを自立運転時に切り替えること、復旧したら連系運転モードに切り替えること、使用する電化製品には限りがあること、などが注意点として挙げられます。
そのほかに気を付けたい点が、「夜は使えないこと」です。
停電時でも使えると思っていると、なんとなくずっと使えてしまう気がしますが、あくまでも「そのときに発電した電力を使う」だけなので、発電ができない夜間は電気が使えません。
また、くもりなど日照量が足りない場合も、想定より少しの電化製品しか使えないということもあるため注意が必要です。
停電時に太陽光発電の電力を使うなら「蓄電池」がおすすめ!
太陽光発電は停電時にはパワーコンディショナーを自立運転モードにすることで電気の使用が可能になりますが、あくまでも発電できる時間のみという制限付きです。
そこで、夜間や天候不良時にも電気が使いたいときには、「蓄電池」の活用をおすすめします。
蓄電池とは、昼間に発電した電気をためておき、あとから使えるようにするためのバッテリーのようなものです。
「自立運転機能があるから何とかなる」と思われる方も多いですが、停電が起こりやすい台風時は、夜も暑かったり、雨戸や窓を閉め切っていて風が通らなかったりすることも多く、熱中症のリスクが高くなります。
扇風機でも暑さは和らぎますが、エアコンが使えたほうが熱中症のリスク対策には効果的です。
また、災害時だからこそ、夜間に明かりが使えないのは不安感が大きくなるので、特に小さな子どもがいらっしゃるご家庭などでは、できるだけ日常と変わらないような生活をしたいものです。
あとから詳しくご説明しますが、蓄電池は停電などの非常時だけでなく、日常的にも使えてメリットも多い設備です。「せっかく蓄電池を付けているけど使わなかった」、ということもありません。
停電時の非常用電源としても、日常的に使える電気設備としても蓄電池はおすすめの設備です。
停電時に「蓄電池」を「自立運転」に切り替える方法
停電時に蓄電池を使うためには、自立運転に切り替える必要があります。
蓄電池用分電盤の切り替えスイッチが「蓄電」になっているのを確認すれば、操作は終了です。連系運転を示す「系統」側になっている場合は、「蓄電」になるよう切り替えをします。
蓄電システムで他に操作をする必要はありません。
蓄電池はどのくらいの時間使える?
大規模災害が発生した場合、長く停電してしまうことも多いでしょう。
例えば、2022年に発生した台風15号では、静岡県で最大12万戸、約2日間の大規模停電が起こりました。早い場合だと数時間で電気が復旧します。しかし、長いと2018年の台風21号で2週間の停電、同じく2018年の台風24号では1週間の停電のように、私たちの生活に大きな影響を与えてしまいます。
蓄電池を使えば、リビング用照明(LED)、テレビ、ノートパソコン、冷蔵庫が最大23時間同時に使えるというデータがあります。
蓄電池の容量によって使える電力量は異なりますが、夜間や天候不良時にもためておいた電気が使えるのは、蓄電池ならではのメリットです。ただし、蓄電池では200Vのものは使えません。
200Vのものには、IHクッキングヒーターや大型エアコン、エコキュートなどがあります。蓄電池使用でエアコンを使いたい場合は、100Vのものかどうかも確認しておきましょう。
蓄電池は停電時以外にもメリットがある!
蓄電池は停電時以外にも使えます。
発電した電気を蓄電池にためておいて自家消費するのはもちろん、電力会社のプランによっては、深夜帯の安い電力を蓄電池にためておき、昼間に使うことで電気代を安くすることもできます。
電気代の値上がりが問題になっているなか、発電した電力を有効に使えたり、電力会社から購入する電気を安いコストで使えたりするのは非常に魅力的です。
企業の場合は、蓄電池の導入はBCP対策になります。
BCP対策とは「Business Continuity Plan」の頭文字をとったもので、事業継続計画のことです。企業が災害時などの緊急事態の際に、事業が継続できるよう対策を取ることをBCP対策といいます。
停電は、一般家庭はもちろん、企業にとっても事業継続にストップをかける一大事です。工場やシステムを停電下でも使用できる状態にしておくことは、リスクマネジメント上でも非常に重要な考え方といえます。
近年、企業においては、DCPが求められるケースも高まっています。
DCPとは「District Continuity Plan」の頭文字をとったもので、地域継続計画のことです。企業の社会的責任(CSR)を果たすという点から、地域の防災拠点として蓄電池などの非常用電源を備える企業も増えています。
SDGs(持続可能な開発目標)の考え方から、環境に配慮した企業経営も重視されています。太陽光発電など、持続可能なエネルギーを使った企業経営は、企業のイメージアップにも貢献するでしょう。
太陽光発電の蓄電池の選び方のポイント
蓄電池の選び方にもポイントがあります。
電力を使う場所を確認する
蓄電池は供給する場所によってタイプが異なります。
- 特定負荷型:特定の回路のみで電力を供給する
- 全負荷型:家庭内のすべての回路に電力を供給する
それぞれのメリットをご紹介します。
<特定負荷型>
- 全負荷型に比べて費用が抑えられる
- 停電時でも電気を長く使える
- 商品がコンパクトなものが多い
- 商品数が豊富
<全負荷型>
- 200V対応商品が多く、大型エアコンなど消費電力が大きい製品も使える
- 場所を選ばずに使える
- 商品数が限られており悩むことがない
特定負荷型の場合、使える場所が限られるので全負荷型に比べると利便性は劣りますが、導入コストが抑えられる点はメリットです。
「ガスも併用していてキッチンや風呂で使う必要がない」など、電気を使う場所を絞れそうなときには特定負荷型、「家族が多く、使える場所が限られるのは不便」など利便性を求める場合は全負荷型、とご家庭の使い方に合わせて選ぶのがおすすめです。
容量を確認する
蓄電池にも容量があり、いくらでも電気が使えるというわけではありません。
4人家族世帯でオール電化の場合に、電気代の目安といわれている15,000円の消費電力は、一日あたり約15kWh 。一般的な家庭用蓄電池の容量目安は5~7kWhで、蓄電池設置の費用相場は160万円前後です。
10kWh前後の大型の蓄電池もありますが、その分コストもかかりますので、停電時に使う必要がある電力についてはよく検討する必要があります。これは企業などに設置する場合も同じで、停電時にはどのくらい電力を必要とするのか、何に電気を使う必要があるのかを考えることが大切です。
特に産業用蓄電池の場合は、高機能で耐久性も高いものが多い反面、コストも格段に高くなりますので、十分検討されることをおすすめします。
蓄電池を設置する流れ
蓄電池を設置するまでの流れをご紹介します。
①見積もりをする
すでに太陽光発電設備を導入しているご家庭でも、蓄電池のみ取り付けることができます。ただし、取り付けられる機器が限られることもあります。
蓄電池の設置工事費用は、本体価格を抜いて約20~35万円です。配線工事費や処分費用など、そのほかに必要な工事費用がかかってくる場合もあるので、見積書で確認をします。
内訳を確認し、工事内容が適切かどうかもチェックしましょう。見積もりは複数の業者に依頼し、相見積もりをとることをおすすめします。
②設置機器を選ぶ
設置業者が決定したら、設置する機器を決定します。
業者は専門知識を持っているため「〇人家族であればこの機器がおすすめです」といった提案をしてくれますが、自分の生活に即した提案かをきちんと判断しましょう。
チェックしたい項目には以下のようなものがあります。
- 耐用年数や売電量をかんがみて費用対効果がよいか
- 家族構成・使い方に合った機能が備わっているか
- ソーラーパネルの発電量と蓄電量のバランスがよいか
蓄電池の寿命は約10~15年です。その間、売電できる量の予測や、そこから得られる売電収入、深夜電力を使うことでどのくらい電気代が安くなるかをシミュレーションすることをおすすめします。
③現地調査をする
希望の蓄電池が置けるスペースがあるかなどを調べる現地調査を行います。
調査のチェックポイントは以下のとおりです。
<屋内の場合>
- 床が蓄電池の重量に耐えられるか
- 熱がこもりにくい環境か
<屋外の場合>
- 直射日光が当たらない環境か
- 隣家との間に十分なスペースがあるか
そのほか、分電盤やパワーコンディショナーの設置場所、配線の確認なども行ないます。
④工事・取り付け・配線工事を行なう
屋外の場合は、コンクリートを打って基礎をつくります。蓄電池は、2人がかりで運ばなければならないほど重量がある製造品なため、安定した基礎も重要です。コンクリート基礎が固まるまでに1~2日はかかります。屋内の場合は基礎工事が不要です。
蓄電池の取り付け後、蓄電池用のパワーコンディショナーや分電盤の設置を行ない、すべての機器の設置が完了したら配線工事をします。
⑤蓄電池の設定を行う
蓄電池には複数のモードが設定されていることが一般的です。
日常的に使用する連系運転時のモード、非常時の自立運転モードなどのほか、強制放電モードやエラー対応など、蓄電池を有効に使うために各設定を行なっていきます。
設定が完了したら、蓄電池の動作が正常に行われるかを確認します。ブレーカーを落として停電状態にし、蓄電池を自立運転モードにして家電が使用できれば完了です。
蓄電池設置時の業者の選び方のポイント
蓄電池は100万円以上かかる高額な設備です。そのため、安心してお任せできる業者に設置を依頼したいという方がほとんどでしょう。蓄電池の設置業者を選ぶポイントもご紹介します。
アフター保証がしっかりしている
蓄電池の寿命は約10~15年、ソーラーパネルの寿命は30年以上といわれています。長く使う機器だからこそ、アフターサービスがしっかりしているところを選びましょう。
また、太陽光発電は日頃のメンテナンスや点検も重要です。機器のトラブル時の対応はもちろん、メンテナンスなど日頃からきちんとサポートしてくれる業者かどうかも確認を。
提案が適切である
適切な数字でシミュレーションをし、デメリットも提示してくれる業者が安心です。
太陽光発電や蓄電池は高価な設備なので、よいところばかりをアピールして購入を促すケースも少なからず存在します。長く使い続ける機器だからこそ、メリットもデメリットも知ったうえで検討できるような提案が好ましいです。
太陽光発電を停電時に使うためには自立運転機能と蓄電池が重要!
太陽光発電は停電時でも「自立運転機能」を使えば、家庭内で電気を使うことができます。
自立運転機能はほとんどのパワーコンディショナーに付いており、操作もさほど難しくありません。メーカーや機種によって操作方法やコンセントの位置が異なるので、必ず取扱説明書を確認しながら行なってください。
ただし、自立運転機能は太陽光発電が行なえる昼間だけ有効な手だてとなります。
夜間や天候不良で発電ができないときには発電ができず電気が使えないため、そのような状況下でも使うために蓄電池の導入がおすすめです。
蓄電池はバッテリーのようなもので、発電できない時間もためておいた電気を使うことができます。非常時だけでなく日常的にも使えるので無駄がありません。
企業のBCP対策としても蓄電池の活用は有効です。
株式会社サンエーは、太陽光発電の導入に向けた設計から施工、導入後のアフターケアまですべてをサポートいたします。蓄電池の設置についてもお気軽にご相談ください。
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