お役立ちコラム
2023/05/07
太陽光パネル設置が義務に?東京都から始まる新時代
太陽光発電
2022年12月15日、東京都の条例で太陽光パネル設置の義務化が正式に決定されました。
この決定は法人や施設ではなく、個人の住宅が対象となります。ニュースを聞いて、「いつから義務化されるのか」「東京都内のみが義務化されるのか」など、さまざまな疑問を持った方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、太陽光パネル設置の義務化はいつから施行されるのか、について解説します。また、対象エリアや義務化の背景、東京都以外の自治体の動き、そして義務化に対してすべきこともあわせて紹介します。
太陽光パネル設置の義務化について情報収集されている方は、ぜひお読みください。
目次
太陽光パネルの義務化とは?
日本はエネルギーの自給率が低く、経済産業省の資料によると2019年度で12.1%となっています。
この数値は他のOECD諸国(経済協力開発機構)と比べても非常に低い水準です(OECD36カ国中の35位)。東日本大震災前までは20.2%でしたが、原子力発電所の停止により現在の水準にまで落ち込みました。
自給率の低さは海外への依存度を高めてしまいます。当然、国際情勢の影響も強く受けてしまうので、エネルギーの安定的な供給が困難になるリスクを抱えているのです。
そのため、太陽光発電のような再生可能エネルギーは国の政策レベルで取り組んでいるテーマとなりますが、東京都は2022年、国に先駆けて太陽光パネルの義務化を決定しました。
住宅への設置台数増加が目的
今回、東京都が発表した太陽光パネル設置の義務化は、新築住宅を対象にした条例です。
個々の家庭に太陽光パネルを設置し、その家庭が消費する電力を自給することで、エネルギーの自給率が低いという課題への対処が可能になります。
もちろん、家庭で消費する電力は家族構成やライフスタイルによって異なるので、すべての家庭が太陽光パネルだけで自給できるわけではありません。ただし、設置した住宅が増えれば増えるほど、公共の電力の負担が減少することは事実です。
東京都が発表した太陽光パネル設置の義務化は、住宅への設置台数を増やすことが目的なのです
義務化案の背景
現時点で、住宅を対象にした「太陽光パネル設置の義務化」を決定したのは東京都のみですが、国も同様の検討をしています。
太陽光パネルのような比較的大型の設備を、一般住宅へ設置を義務付けることに違和感を覚えた方もいるかもしれません。
しかし、国策として検討されているほど、日本が抱えるエネルギー問題がいかに大きいかを理解する必要があります。また、国際的な課題でもある環境問題も背景にあることを知っておくことも重要です。
次章で詳しく解説していきます。
太陽光パネルの義務化で解消される問題
「太陽光発電」を含めて、水力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーは、地球温暖化や脱炭素などの問題に対して、有効な解決策になると期待されています。
これらは国際社会が抱えている問題でもあり、世界各国の政府も再生可能エネルギーの導入を後押ししています。
具体的な内容を見ていきましょう。
地球温暖化の問題
地球温暖化とは温室効果ガスが増加することで、地球全体の温度が上昇する現象です。
温室効果ガスとは、人類が排出している「二酸化炭素(CO2)」や「メタン」の気体のことで、大気中の濃度が高まると、本来、宇宙に放出されるべき放射熱が温室効果ガスに遮られ、地球に滞留してしまいます。
結果、地球の温度は上昇し続けて降雨パターンや海面の水位にも影響し、自然環境に大きな被害を与えているのです。
CO2は石油や石炭などの化石燃料を燃やすことでも排出されます。特に1750年頃の産業革命以降、化石燃料の使用量に比例してCO2の排出量が急増したと言われています。
そして、従来の発電方法である火力発電はCO2を排出する一方、太陽光発電はCO2を排出しません。そのため、火力発電から太陽光発電に替えることでCO2の排出量を減少させ、地球温暖化の進行を食い止めることが期待されているのです。
脱炭素の課題
前節でCO2の排出が地球温暖化の問題を引き起こしていることを説明しましたが、日本では「発電」に伴って排出されるCO2が全体の排出量の4割弱を占めています。
CO2は車両やエアコンなど一般的な社会環境からも排出されてしまうものですが、全体の4割は化石燃料を使用した発電から排出されているのです。
そのため、地球温暖化の課題に取り組むのであれば、「発電の脱炭素化(CO2排出ゼロ)」は避けて通れません。
CO2排出ゼロの発電を実現するためには、原子力発電もひとつの方法ですが、日本では原発事故以降、再稼働が困難な状況です。そこで、太陽光発電を含む再生可能エネルギーへの期待が高まっています。
なお、2020年10月に政府が発表した「カーボンニュートラル政策」とは、温室ガスの排出から森林等による吸収量を差し引いて、排出の合計値を実質ゼロにする取り組みのことです。現在のところ、2050年までに実現する政策として掲げられています。
エネルギー消費量の激増の問題
世界のエネルギー消費量は、産業革命以降の人口増加とともに激増しています。石油や石炭がエネルギー資源として使われ始めたのも産業革命の頃で、人間の生活が豊かで便利になった一方、大量の化石燃料が使用されるようになったのです。
エネルギー消費量増加の状況は、近年においても変わっていません。国際エネルギー機関(IEA)の発表によると、2030年の世界のエネルギー消費量は、2014年の消費量と比較して1.3倍に増加すると予測されています。
ただし、2030年でも「最大のエネルギー源は石油である」というのが、国際エネルギー機関(IEA)を始めとする関連機関の統一見解です。
いつまでも石油や石炭などの限りある資源に頼ることができないため、再生可能エネルギーなどによる資源の安定的な確保は、世界規模で取り組むべき急務なのです。
太陽光パネル義務化はいつから?
太陽光パネル設置の義務化は国の政策として取り組んでいるテーマですが、実際の動きには国と自治体で違いがあります。
太陽光パネルの設置を義務付ける対象物や時期などについても、国やほとんどの自治体では詳細を決定していません。すでに義務化を決定した東京都の詳細を含めて、国や他の自治体がどのような段階なのか、次章で見ていきましょう。
太陽光パネル義務化の対象エリアは?
この章では2023年3月時点で太陽光パネルの設置が義務付けられている対象エリアや、国の検討状況、具体的な動きを見せている自治体の詳細について説明します。
国は積極的に検討中
国は太陽光パネルの設置に積極的な姿勢を見せているものの、現段階では一般住宅への義務化を決定していません。
政府が取り組んでいる太陽光パネルを含めた再生可能エネルギーの推進は、国土交通省、経済産業省、環境省が連携しており、有識者や実務者を加えて「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を設置しています。
2021年6月、検討会は「政府や公共団体への太陽光パネルの設置は義務化し、一般住宅への義務化は見送る」と発表しました。そのため、現段階において太陽光パネルの設置は全国の一般住宅で義務化されているわけではありません。
具体的な時期についても発表はされていませんが、政府の目標として「2030年までに新築一戸建て住宅の6割に太陽光パネルを導入する」と掲げているため、一般住宅への義務化は早くても2031年頃と見られています。
東京都の動向
東京都では2030年までに、都内の温室ガス排出を50%削減する「カーボンハーフ」の実現を目標にしています。
その実現に向けて2022年12月、新築住宅への太陽光パネルの設置を義務化するための改正案が可決・成立し、国に先行して一般住宅への義務化が決定しました。
この条例は、2025年4月から施行されます。
独自の義務化案を制定
東京都が定めた条例では、義務付けの対象は新築住宅の購入者(居住者)ではなく、都内で住宅を供給する大手住宅メーカー50社程度です(延べ床面積の合計が年間2万平方メートル以上の住宅メーカー)。
義務化とはいえ、日照状態などの立地条件や住宅の形状などから、太陽光パネルを設置するかの判断は対象事業者に委ねられています。また、屋根の面積が一定規模未満の場合には、設置対象からの除外も可能です。
神奈川県川崎市の動向
神奈川県川崎市では脱炭素社会の実現に向けて、太陽光パネルの設置を義務化する条例の制定に取り組んでいます。
川崎市では、2023年度中に太陽光パネルの設置義務化を施行する予定です。
延べ床面積を基準に条例を制定
川崎市の案では、延べ床面積2,000平方メートル以上の新築や増改築建築物の場合、建設主に太陽光パネルの設置を義務付けます。
また、市内で延べ床面積50,000平方メートル以上の住宅を供給する住宅メーカーには、延べ床面積2,000平方メートル未満の新築建築物でも太陽光パネルの設置を義務付ける予定です。
なお、東京都のように日照条件や住宅の形状を理由に設置対象からの除外を可能にするかは検討中です。
京都府の動向
京都府では2015年に制定した「京都府再生可能エネルギーの導入などの促進に関する条例」により、一定の基準に該当する建築物には太陽光パネルの設置が義務付けられています。
延べ床面積を基準に条例を制定
京都府の条例では2015年より、延べ床面積2,000平方メートル以上の建築物であれば太陽光パネルの設置が義務付けられています。
さらに、2021年に条例が改正され、延べ床面積が300平方メートル以上の事業所・住宅・ビルを建築する場合も太陽光パネルの設置が義務付けられました。
そのほか、条例の対象になる住宅メーカーや工務店には、消費者に対して太陽光発電システムの情報提供を義務付けています。
群馬県の動向
群馬県では「ぐんま5つのゼロ宣言実現条例案」の中で、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロが掲げられています。そして2022年、一定の基準に該当する建築物への太陽光パネルの設置を義務付ける条例を制定しました。
この条例は2023年4月から施行されています。
一定規模以上の設備に対して義務化
群馬県の条例では2023年4月より、延べ床面積2,000平方メートル以上の建物を新築、増改築する際に太陽光パネル等の再生可能エネルギー設備の設置が義務付けられました。対象は工場や事業所などです。
今後の太陽光パネル義務化の拡大計画は?
ここで紹介した自治体以外でも、さまざまな自治体が再生可能エネルギーの推進に取り組んでいます。
まだ一般住宅への太陽光パネルの設置義務化を制定していない自治体でも、今後、温室効果ガス削減のために検討を始める自治体も増えてくるでしょう。
また、前回は見送りとなりましたが、国もカーボンニュートラル実現のために、義務化を決定する可能性もあります。
太陽光パネル義務化に対してすべきことはある?
今は太陽光パネル設置が義務化されていない自治体にお住まいの方でも、将来的なことを考えて、以下の項目はおさえておいたほうがよいでしょう。義務化が決定した場合、慌てずに対応できます。
太陽光パネルの仕組みや特徴を理解しよう
太陽光パネルは、光が当たると電気を発生させるシリコン半導体の現象を利用した装置です。
太陽の光を浴びて電気を発生させたあとは、パワーコンディショナという装置によって、普段利用している交流電力に変換されます。その交流電力を家庭で利用することで、電力会社からの消費電力を減らせるのです。
なお、蓄電池という装置も導入していれば電力を溜めておけるので、昼間に太陽光パネルで溜めた電力を夜間に利用できるようになります。また、蓄電池を導入しなくても、余った電力は自動的に電力会社に売電される仕組みになっているので、無駄が発生することはありません。
費用感を調べておこう
太陽光パネルの導入を検討する際に気になるのが、費用感ではないでしょうか。
導入時には、太陽光パネルのほか、交流電力に変換するためのパワーコンディショナや配線、架台、工事費用を含めておよそ120万円~170万円の費用が必要になります。
屋根の形状やメーカーによっても価格は異なるので、具体的な費用は、太陽光パネルの設置を取り扱っている業者へ確認しましょう。
太陽光パネルメーカーの動向を把握しておこう
国内で導入できる太陽光パネルには、さまざまなメーカーがあります。
2005年時点では太陽光パネルの世界市場では、日本メーカー(シャープ、京セラ、三洋電気、三菱電機、カネカ等)が48.2%のシェアを誇っていましたが、近年では海外メーカーの存在力が高まっています。
2018年には、日本メーカーの世界シェアは1.2%に低下した一方、中国・台湾のメーカーが70%を占めています。
ただし、日本における住宅用の太陽光パネルでは日本メーカーが2019年時点で76%と、まだまだ高いシェアを維持しています。
一部、自社生産を終了したメーカはあるものの、日本の住宅用としてはパナソニック・京セラ・シャープ・ソーラーフロンティアといった日本メーカーの太陽光発電システムがあります。
それぞれのメーカーの製品特徴を調べたうえで、予算に合わせた製品を選定するとよいでしょう。
太陽光パネルに関するよくある疑問
最後に、太陽光パネルに関するよくある疑問についてお答えしていきます。
義務化に反した場合、罰則規定はあるの?
これまでに紹介したように、太陽光パネルの設置義務はそれぞれの自治体によって条例の有無や、対象の建築物なども異なっているため、義務化に反した場合の罰則規定についても、それぞれの自治体の取り決めに寄ります。
ただし、一般住宅への義務化を発表した東京都の条例を確認しても、義務化に反した場合、住宅メーカーに対して指導や勧告は検討されているものの厳しい罰則までは課せられないようです。
今後、太陽光パネルの設置義務化が施行されたあとの導入状況によって、罰則規定も検討されるかもしれません。
太陽光パネル導入の補助金ってあるの?
太陽光パネル導入に関する国からの補助金制度は、2023年度時点ではありません。
ただし、自治体によって独自の補助金を制定していることがあります。なかには蓄電池の設置を対象にした補助金もあるので、詳しくはお住まいの自治体に問い合わせてください。
ただし、自治体独自の補助金は申請期間が決まっていることが多いです。太陽光パネルの導入を検討されている方は、早めに調べることをおすすめします。
太陽光パネルのメンテナンスってどうするの?
以前は太陽光パネルのメンテナンスは不要といわれていましたが、2017年の改正FIT法によって「50kW以上」の太陽光発電所には4年に一度の定期点検が義務付けられました。
太陽光パネルの製品自体は故障しづらくても、風雨に晒される場所に設置されるため、汚れなどによってどうしても発電効率が低下することがあります。安定的な電力供給を維持するためにも、4年に一度の定期点検は必要です。
定期点検は専門業者によって行われ、太陽光パネルや架台などの製品点検、パワーコンディショナーの動作点検、電圧点検などが実施されます。費用は規模や設置状況にもよりますが、1万円~2万円ほどです。
まとめ
太陽光パネル設置義務化の背景や各自治体の動き、東京都の条例などについて解説しました。
近年の電気代高騰によって、太陽光パネルの設置が義務化されていない自治体にお住まいの方でも、導入をご検討されている方は多いと思います。
太陽光パネルは設置してから10年?20年も使い続ける製品のため、運営実績やアフターサービスがしっかりしている業者を選ぶことが重要です。
サンエーは、家庭用太陽光発電の設置を承っています。導入の設計から施工はもちろん、導入後のアフターフォローまでワンストップでトータルサポートいたしますので、安心してお任せください。
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